東京都青少年保護条例改正案についての意見(携帯電話関連)
現在都議会で審議中の東京都青少年保護条例では、児童ポルノと携帯電話に関する内容が柱となっています。これらのうち携帯電話関連について、私の意見を書きます。
1.携帯電話端末等の推奨について
現在生じている問題を解決することに、端末推奨がつながるとは考えにくいです。問題は端末の機能ではなく、通話・メール限定、フィルタリング、迷惑メール防止、料金上限制限といったオプションが適切に活用されていないことにあります。民間が取り組むべきことへの不当な介入と考えられます。
2.インターネット利用に係る都の責務について
一般的に、都が普及啓発や教育の推進につとめるということについては異存ありません。また、青少年に対して行われるインターネットの利用に関する啓発についての指針を定めることも必要でしょう。ただし、バランスのとれた取り組みにしてもらわなければ困ります。
3.保護者のフィルタリング加入厳格化等について
議論のあるところですが、フィルタリングを外すために保護者が書面で理由を示すということに、私は基本的に賛成です。ただ、この件に関して、従わない事業者を公表したり立ち入りを行ったりするということは行きすぎです。こうした措置がなければ実効性がないという考えなのでしょうが、条例で決めるということはそれ自体重いのであり、事業者名の公表や立ち入りを定めるのは過剰な介入です。
4.行政機関による知事への通報等について
現行でも利用者に違法行為があれば警察が捜査し検挙等を行うことができるのですから、知事への通報や知事による保護者への指導・助言を定めることは行きすぎです。
5.その他
青少年問題協議会で議論されていた点のうち、都がフィルタリングの基準に介入する、保護者が子どもの携帯電話の内容を無断で見てよいことにするといった憲法違反とも言える内容が条例案に入っていなかったことは当然であろうと考えます。青少年問題協議会での議論が偏りすぎていなかったか、検討されるべきです。
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Comments
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フィルタリング解除理由について、「東京都規則で定める正当な理由」に限定しているのが問題です。先行している兵庫の例や条文での例示などから、ほとんどの場合は履歴閲覧機能を解除理由とするほかありませんが、しかし、現行の履歴閲覧機能は利用者自身が自分のネット利用の状況を確認するための機能になっていて、保護者が青少年の閲覧を監督するための機能ではありません。履歴閲覧のたびに携帯電話本体でパスワードを確認する必要があるとのこと。
そして、監督目的の、携帯電話本体での操作が不要で利用者が気づかない形で利用できる履歴閲覧機能を携帯電話事業者が提供することは、電気通信事業法の通信の秘密の違反になるため、提供できないというのが、条例案のもとになった答申時点での携帯電話会社各社や業界団体の見解です。
これを前提にすると、保護者は「履歴閲覧をするふり」をして理由書を提出して実際には通常は放置するか、誠実に「履歴閲覧できません」ということで解除しないかのどちらかの対応になってしまいます。
Posted by: 崎山伸夫 | 2010.03.10 10:58 PM