「デジタル読解力」をめぐって
昨日、文部科学省より、「OECD生徒の学習到達度調査(PISA2009)デジタル読解力調査の結果について」という発表があった。新聞やテレビでは、日本が「デジタル読解力」の調査で19の国・地域のうち4位であったことを報じている。私もこの件について、NHKと毎日新聞の取材を受け、以下のように(短くではあるが)私のコメントが紹介されている(ただし、NHKの実際の放送では私のコメント部分がカットされた模様)。
▽NHK PC使う読解力 日本は4位 (6月28日 17時39分)
教育とメディアに詳しい千葉大学教育学部の藤川大祐教授は、今回の調査の背景について「インターネットの普及でデジタル画面上の読解力が非常に重要になってきている」と話しています。そのうえで「日本はこれまでパソコンなどの情報機器を教育現場から遠ざけてきたが、このままでは日本が取り残されるおそれがある。授業で活用できるところは積極的に使うことが必要だ」と話しています。
▽毎日新聞 デジタル読解力:日本4位 評価の一方で課題も (6月28日 20時07分)
情報教育に詳しい藤川大祐・千葉大学教授(教育方法学)は、今回の結果について「諸外国に比べて日本のデジタル情報教育の遅れが顕著なことが、国際調査で初めて明らかになった」という。/特に、国語・数学・理科の授業でコンピューターを使う生徒の割合が、OECD平均の10分の1に満たなかった。「パソコンはあくまで『道具』。教科の枠にとらわれない取り組みが急務だ」と藤川教授は指摘する。
「デジタル読解力」のニュースは、日本が何位かということよりも、日本が教科教育の中で情報機器をほとんど使っていないことが公式に認められたことにあると考えます。日本の情報教育は、教科教育とは距離を置いて進められてきました。本来は、情報技術の進展に伴って教科教育のあり方が問われるべきなのに、そうなっていません。OECDが「デジタル読解力」を調査することの影響が、今後じわじわとあらわれてくると予想します。国語で批判的思考を促したり、数学で大量の統計データや近似値を扱ったりといったことにつなげなければと考えます。
文部科学省が先頃公表した「教育の情報化ビジョン」でも、教科教育の見直しに踏み込む記述は避けられています。私はこれを議論するWGの委員の立場から、批判的思考の育成等、教科教育の見直しに踏み込むことを強く求めましたが、情報教育と教科教育との間の壁は厚く、私の意見はほとんど採用されませんでした。私がWGで出した提案は http://dfujikawa.cocolog-nifty.com/jugyo/2011/01/post-d4db.html に掲載してあります。
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