NHKニュース「被害の6割 「健全」サイトで」にもの申す
【2011.11.10 23:30追記
下記の記事において、警察庁の広報資料を私が完全に誤読していることがわかりました。EMA認定サイトか否かという項目において、平成23年上半期は被害児童数、平成22年下半期は件数が示されていました。よって、数の比較ができないこととなります。私のほうがミスリードの記事を書いてしまい、お詫び申し上げます。以下、訂正を入れさせていただきます。お恥ずかしいのですが、記録のため、最初に書いた部分がわかるように訂正いたします。】
警察庁が11月9日に「コミュニティサイトに起因する被害児童の事犯に係る調査結果について(平成23年上半期)」を発表し、NHKがこれを受けて「被害の6割 「健全」サイトで」というニュースを報じている。NHKは言う。
携帯電話のゲームサイトなどを通じて子どもが巻き込まれた性犯罪などの60%近くが、第三者機関から「健全」と認定されたサイトを通じて起きていたことが分かりました。警察庁は、サイトの監視を強化するよう第三者機関に求めるとともに、利用者に注意を呼びかけています。(中略)
警察庁は、ことし2月から、被害が起きたサイトの具体的な情報を機構に提供する取り組みを始めましたが、「健全」とされたサイトを通じて起きた事件の割合は、去年の下半期より増えています。(以下略)【後半の引用を加えました。】
これを見ると、EMA認定サイトの問題が深刻化しているという印象を受けるだろう。たしかに、コミュニティサイトでの被害児童数では、EMA認定サイト関連の比率が増えている。
だが、前の期との比較は以下のようになっている。
EMA認定サイト関連 321人(58.8%) 平成22年下半期は462件【ここを「人」と誤記していました】(57.0%)
EMA未認定サイト関連 226人(41.2%) 平成22年下半期は349件【ここを「人」と誤記していました】(43.0%)
【以下、誤記をしていた部分を訂正して書かせていただきます。】
平成22年下半期に関しては、EMA認定/未認定の別が被害者別では公表されていない。仮に事件数と被害者数が比例すると考えれば、平成22年下半期は件数が合計811件、被害児童数が633人なので、上記は次のようになる。
EMA認定サイト関連 321人(58.8%) 平成22年下半期は360.6人(57.0%)
EMA未認定サイト関連 226人(41.2%) 平成22年下半期は272.4人(43.0%)
両分類とも被害者数がある程度減っていることが推測される。少なくとも、今回の資料から、EMA認定サイトでの被害児童数が増えたと考える根拠はない。上記の数値に近いとすれば、相対的にEMA未認定サイトでの減少が多かったため、EMA認定サイトの比率が高くなったことになる。
ちなみに、被害の出ているEMA未認定サイトは中小のサイトばかりで、利用者数に比して被害者が多いところが多いと言える。最近のさまざまな取組の結果、こうしたサイトでも対策が進んだり、こうしたサイトが閉鎖されたりといったことがあり、未認定サイト関連の被害者が大幅に減ったことは十分に考えられる。
なお、福祉犯被害児童数は年間7000~8000名程度である(参照)。コミュニティサイト関連の被害者数が減少に転じたのを機に、今後は福祉犯被害者全体をどう減らしていくかという観点をもち、コミュニティサイト関連でできること「も」進めていくというスタンスが必要である。
今回のNHKの報道では、被害者の実数を比較することをせず、比率だけを問題にし、おそらく実数が減っているにもかかわらず警察庁やEMA等の努力が無駄になったという印象を与えるものだ。こんな報道では困る。
【当初は以下のように書いていました。以下は誤記ですので、ご注意ください。
両分類とも目に見えて被害者数は減っており、相対的にEMA未認定サイトでの減少が多かったため、EMA認定サイトの比率が高くなったというわけだ。
ちなみに、被害の出ているEMA未認定サイトは中小のサイトばかりで、利用者数に比して被害者が多いところが多いと言える。最近のさまざまな取組の結果、こうしたサイトでも対策が進んだり、こうしたサイトが閉鎖されたりといったことがあり、未認定サイト関連の被害者が大幅に減ったと考えられる。
なお、福祉犯被害児童数は年間7000~8000名程度である(参照)。コミュニティサイト関連の被害者数が減少に転じたのを機に、今後は福祉犯被害者全体をどう減らしていくかという観点をもち、コミュニティサイト関連でできること「も」進めていくというスタンスが必要である。
今回NHKが報じるべきは、「認定サイト、未認定サイトとも、被害者大幅減」ではなかったか。それぞれ3割以上被害者数が減っていることこそ、ニュースのはずだ。こんな報道をしているようでは、困ります。】
« 「ミニマックス戦略」を教える授業 | Main | 明日の教室DVDシリーズ「藤川大祐 授業に関わって」発売 »
「メディアと教育」カテゴリの記事
- 日本教育工学会2020年秋季全国大会(オンライン開催)発表資料(2020.09.14)
- SNSでの青少年の犯罪被害に関するコメント(2020.01.17)
- 藤川大祐×岩立沙穂・岡田彩花・村山彩希・飯野雅・大川莉央・込山榛香(AKB48)『実践!スマホ修行』発売について(2016.08.05)
- 青少年インターネット環境の整備等に関する検討会(第30回)資料(2016.03.01)
- 真のフィルタリング利用率は23%まで急落している(2015.08.27)
Comments
The comments to this entry are closed.
平成22年度下半期の「被害児童」は638人では無いですか?
内訳は存じ上げませんが。
上記資料の1ページ目に記されています。「目に見えて(被害者が)減った」こそミスリードと思われます。
取り上げていらっしゃる「811(462+349)」は被害児童数ではなく、事件の「件数」の様です。
何しろ、「件数」と「被害児童数」の単純比較はできないと思われます。困ります。
Posted by: 小川正樹 | 2011.11.10 10:55 PM
小川様、藤川です。ご指摘ありがとうございます。
警察庁の広報資料を確認いたしました。ご指摘のように、平成22年下半期の数字は件数のようです。完全に誤解しておりました。追って記事を訂正いたします。
ご指摘まことにありがとうございます。
Posted by: 藤川大祐 | 2011.11.10 11:05 PM