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October 2019

2019.10.27

流山市だけではない、教委等の法令違反のいじめ対応(報じられた主なもの一覧)

流山市教委の法令違反かつ不適切ないじめ対応についてですが、当ブログの記事にいただいたコメントによれば、昨日流山市内で行われたタウンミーティングには井崎市長や後田教育長が出席され、いじめ対応についても話題になったようです。流山市のサイトを見ると、市内2ヶ所で、子育てや教育をテーマにしたタウンミーティングが実施されたようですね。報道機関の取材にはなかなか応じてくださっていない市長や教育長が、お逃げになることなくこうした場に出ていただき、市民の方々と対話をされたことは大変ありがたいです。

まだ昨日のタウンミーティングの記録はアップされていませんが、当ブログにいただいたコメントによれば、市長も教育長も法令違反や不適切な対応を反省したり謝罪したり様子は示されていないようです。せっかく市民の方々に見解を出していただける機会に、このように責任逃れの印象を与えてしまうのは残念なことです。

特に問題なのは、後田教育長がおっしゃったとされる「最終報告を待つ。しっかり見極めて対応する」という言葉です。最初に事案が発生してからすでに5年が経過しており、平成29年12月と今年5月に2回にわたって中間報告書が提出されています。これらの中間報告書では、最終報告書を待つことなく必要な対応をとるよう求めて来ました。29年12月に教育長に中間報告書を手交させていただいた際にも、教育長は最終報告書を待たずに対応していただけることに合意していただけたと考えておりました。

仮に昨日の後田教育長の発言が事実だとすると、法令違反や不適切な対応について最終報告書が出るまで何もしないという姿勢は、単なる指導課の担当者の態度ではなく、トップの教育長が定めた市教委としての公式の方針ということになります。このことのもつ意味は大変重いです。というのは、中間報告書を提出したのは、市教委が任命した委員によって構成される流山市いじめ対策調査会であり、その調査会から求めた「最終報告書を待たない対応」について、任命権者である教育長が明確に否定したことになるからです。市教委自身が定めた流山市いじめ防止基本方針では「いじめを受けた児童等の救済を最優先に考え、いじめを行う児童等の行為を止め、関係機関と連携して指導します」とありますが、最終報告書まで対応しないという態度が「児童等の救済を最優先に考え」る態度と言えるはずがありません。そもそも、最終報告書が出るまで再発防止策を検討してはいけないとか被害者を支援してはいけないなどという規定はどこにもないのですから、躊躇なくできることをすればよいはずです。

後田教育長をはじめとする市教委の「最終報告を待つ」という態度は、被害者への二次被害を生じさせています。被害者は今も被害とその後遺症に苦しんでいます。中間報告書が出れば、市教委は必要な対応をとってくれると期待していたはずです。何かしようとしてもそう簡単には進まないでしょうが、後田教育長はじめ市教委は「最終報告を待つ」として、当面何もしないことを宣言してしまっていることになります。このことは、中間報告書の提出後の動きにわずかな希望を抱いていたはずの被害者をさらに深い絶望へと突き落とすことになります。そもそも、被害者が最もつらかったことは、平成29年夏の段階で、重大事態認定後の調査が4ヶ月以上も、調査会への委託すらなく進んでいなかったことだと聞いています。すでに、この問題の最大の加害者は市教委となっているのであり、後田教育長の「最終報告を待つ」という態度は、市教委による被害者への「いじめ」を重ねる態度なのです。

この問題を発表させていただいてから明日で1週間となります。いじめ問題に関わっておられる国会議員や県議の方々からは発表直後にご連絡をいただき、その後も動いてくださっています。国や県でもこの問題を受けた動きが出てくるはずです。流山市の市議の方々も、遠慮なく連絡をくださればと思います。昨日の記事で後田教育長にお尋ねしたいことをまとめてありますが、市教委の対応のどこがどのように問題があり、どのような質問をすれば問題が明らかになるか、何を求めるべきか等、意見交換させていただければありがたいです。

流山では、法令違反や不適切な対応があり、指摘されてもなお態度を改めない教育長はじめ市教委の方々の態度が被害者に二次被害を与え続けているわけですが、「流山だけの問題ではない」とお感じの方も多いと思います。実際、報道されている例は多いので、以下に競りしておきたいと思います。

○取手市教委(茨城県) 平成27年11月に中学生が亡くなった事案で、保護者が独自調査の結果を提出しいじめ被害があったことを訴えたにもかかわらず、市教委は教育委員会議で重大事態でないと違法な議決を行いました。本件については、文部科学省の指導等があって市教委は議決を覆して重大事態と認定し、県に調査を委託しました。今年3月に県が設置した調査委員会が調査報告書を提出し、これを受けて取手市いじめ問題専門委員会が再発防止策案を策定、現在、再発防止策案についてのパブリックコメントを募集しています。私は本件を受けて取手市が条例で設置した取手市いじめ問題専門委員会の委員長をつとめさせていただいています。なお、市教委や学校の関係者には、市や県から停職や減給といった懲戒処分がなされています。

川口市教委(埼玉県) 中学生がいじめ被害を訴え自殺未遂をしていたにもかかわらず学校や市教委はなかなか重大事態と認めず、ようやく重大事態として調査委員会を設置したものの、被害者側にはこうしたことを伝えず、聴き取りも行いませんでした。いじめ防止対策推進法第28条第2項では重大事態調査にあたっては被害者や保護者に情報を適切に提供すべきことを定めており、法令違反だと言えます。週刊文春の記事によれば、高校1年となった被害者が「教育委員会は、大ウソつき」という遺書を残して今年9月に自殺しました。

○吹田市教委(大阪府) 平成27年から29年にかけて小学生が暴言や暴行のいじめ被害を受け骨折や心因性の視力障害などを負った事案について、市教委や学校は1年半にわたって放置。日経新聞の記事によれば、被害者の両親は市教委の対応について「何度も足を運んだのに取り合ってもらえず、つらく悔しい思いをした。何のための組織なのかと思った」と強く批判しています。しかも、朝日新聞の記事によれば、市教委は第三者機関による調査を拒否していました。

○神戸市教委(兵庫県) 教員カレー「いじめ」事件が話題となっている神戸市教委ですが、児童生徒のいじめ被害への対応についても問題ある対応が報じられています。第一に、平成28年10月に中学生が亡くなった事案で、いじめ内容を記した調査メモが隠蔽され、関係者が懲戒処分されています(産経新聞の記事)。第二に、いじめを苦にして尼崎市の中学校に平成30年に転校した生徒の被害について重大事態としての調査を行わず、その生徒が今年8月に亡くなっています(神戸新聞の記事)。

○仙台市教委(宮城県) いじめ自殺案件が複数回報じられている仙台市では、平成30年11月に小学校2年生へのいじめを苦にして、母親が被害児童と無理心中したことが報じられています。この案件では、死亡後に学校が被害児童の欠席日数を計30日から28日に訂正したことが判明しており、重大事態にしないために欠席日数の操作が行われたのではないかと指摘されています(河北新報の記事)。いずれにしても、いったんは30日とカウントされていたのですから重大事態としての対応がなされるべきでしたし、30日はあくまでも目安ですから28日であっても重大事態としての対応が検討される必要があったと考えられます。

他にもあるかもしれないのですが、私が現時点で把握している最近の事例は以上です。他の事例をご存知の方はぜひお知らせください。

なお、昨年3月、総務省が「いじめ防止対策の推進に関する調査〈結果に基づく勧告〉」を公表しています。この中には重大事態の調査にさまざまな問題があることが示されています。たとえば、重大事態調査結果の被害者や保護者への情報提供を行っていない事例は回答のあった37教委のうち6教委に見られます。保護者への情報提供を行っていない理由は下記の通りであり、認識不足を挙げている県教委が1、市教委が1あることがわかります。この市教委では該当する重大事態が11件もあり、そこで被害者側に情報提供が行われていないのはどういうことなのか、(そしてこの市教委がどこなのか)気になります。

Hogosha

2019.10.26

流山市教育委員会 後田博美教育長にお尋ねしたいこと

流山市教委の法令違反かつ不適切ないじめ問題対応について、昨日、萩生田文科相が「教育委員会の対応に問題があると思う。だからこそ前会長も辞めてしまって、記者会見を開く事態になったんだと思う」とおっしゃっています。被害者に寄り添い、県教委を通して流山市教委を指導されるとのことで、期待しています。文部科学省児童生徒課のいじめ問題担当の方には、これまでも再三再四、流山市教委への指導をお願いしてきました。しかし、私がお願いしても、実効性ある指導はなされていません。今度は、トップである大臣がおっしゃっていますので、これまでとは違う形で指導されるものと期待しています。報道機関の方々には、ぜひ文部科学省がどのような指導をされるのかを取材していただきたく思います。

大きな問題に対応するとき、組織のトップが動くことは重要です。逆に言えば、組織のトップが何もしないような組織では、大きな問題に適切に対応することは難しいでしょう。この意味で、流山市教委の後田博美教育長には、ぜひ今からでもリーダーシップをとって、市教委のあり方を抜本的に見直し、これまで不適切な対応をされてきたいじめや体罰の被害者に対して必要な調査や支援を行っていただきたいと願っています。

過去の任命の際の文書によると、後田教育長は、流山市内の小学校の教諭、教頭、校長や市教委の職員を経て、平成23年4月に教育長に就任されており、26年9月に再任され、(記録が見つからないのですが)29年9月に再々任されているはずなので、現在3期目だと思われます。おそらく、来年令和2年9月までが任期です。私としては、ぜひ現在の任期中に、今回指摘させていただいたいじめ問題への対応について、教育長から率直なご説明をいただきたいと願っています。【追記:教育委員名簿によると、後田教育長の任期は令和3年9月まででした。】

私はこれまで二度教育長にお目にかかり、教育長のご認識やお考えをお尋ねしました。しかし、残念ながら十分なお答えをいただくことはできません。おそらく、今後私が直接教育長にお尋ねする機会はないと思いますが、教育長にお尋ねしたいことをここに記します。教育長に質問をされる機会があるであろう流山市議会議員のみなさんや報道機関のみなさん、ぜひこうしたことを教育長にお尋ねいただきたいと思います。

以下、質問を箇条書きで列挙させていただきます。

(平成29年認定重大事態認定案件について)

Q1 教育長が本件について報告を受けられたのは、いつ、どなたからだったでしょうか。

Q2 教育長は本件について、指導課にどのような指示をされましたか。指示をされなかったとしたら、なぜ指示をなされなかったのでしょうか。

Q3 本件の重大事態認定が遅れたことについて、県教委から指導の連絡がなされていますが、こうした連絡があったことについて、教育長は報告を受けておられましたか。受けておられた場合、いつ、どなたから報告を受けられましたか。

Q4 本件について、調査主体を学校でなく教委にすることについては認識をされていましたか。認識をされていたとしたら、条例上、調査会に調査を委託することになっていることをご存知でしたか。

Q5 本件は教委が調査会に調査を委託する初の事案となったはずですが、初めての調査にあたり、調査の進め方について指導課から報告を受けたり指導課に指示をされたりしましたか。しておられたとしたら、具体的にどのような報告あるいは指示でしたか。

Q6 本件調査が調査会に委託されたのは市教委による重大事態認定から4ヶ月以上経過してからでしたが、すぐに委託されなかったことについてお知りになったのはいつ、どのようにしてでしょうか。お知りになったことを受けて、教育長はどのような行動をとられたでしょうか。

Q7 平成29年12月に調査会から本件についての中間報告書が提出されていますが、この報告書を受けて、教育長はどのような行動をとられたのでしょうか。

Q8 調査会への調査委託が4ヶ月以上遅れたこと、そしてそのことが被害者に多大なる苦痛を与えたことについて、責任はどなたにあるとお考えでしょうか。指導や処分等はなされたのでしょうか。

(平成26年度発生事案について)

Q9 教育長が本件について報告を受けられたのは、いつ、どなたからだったでしょうか。その際、記録上の欠席が30日を超えているという点について、報告を受けておられましたか。

Q10 報告を受けられた当時、いじめによると考えられる不登校の日数がおおむね30日以上となった場合、いじめ防止対策推進法における重大事態に認定しなければならないことをご承知でしたか。ご承知だったとしたら、本件が重大事態として認定されていないことについて、報告を受けた当時、どのようにお考えになりましたか。指導課に対しては何らかの指導をなされましたか。

Q11 本件は平成30年10月に重大事態として認定されていますが、重大事態認定にあたり指導課からいつ、どのような説明を受けられましたか。また、指導課に対してどのような指導をなされましたか。

Q12 結果的に、重大事態の要件が満たされてから重大事態認定まで3年半以上かかっているわけですが、このように重大事態認定がなされていなかったことの責任はどなたにあるとお考えでしょうか。指導や処分等はなされたのでしょうか。

(流山市のいじめや体罰の問題への対応について)

Q13 これまで流山市の学校でいじめや体罰の被害に遭い、市教委や学校から不適切な対応を受けてきたと訴える方が次々と現れています。教育長は、これまでの教員や教委職員のご経験を含め、こうした不適切な対応の事例をご承知ですか。ご承知だとしたら、その事例についてはどのような対応がとられていましたか。

Q14 これまで訴えがあった案件について、事実確認を行っていただくお考えはおもちですか。

Q15 こうした不適切な対応が今後生じないようにするために、市教委としてどのようなことを行うおつもりでしょうか。

教育長がこうしたことについて率直に説明してくださることがあれば、流山市教委で何が起こっていて何が問題だったのかが、かなり明確になると思われます。市議会議員のみなさん、報道機関のみなさん、ぜひこうしたことを教育長にお尋ねください。教育長が率直に説明してくださることを切に願っています。

2019.10.25

流山市事案を受けた千葉県いじめ防止対策条例の改正の可能性について

このブログで連日取り上げている流山市教委のいじめ問題に対する法令違反かつ不適切な対応について、多くの方からご連絡をいただいています。再発防止や被害者支援を進めなければならないのですが、今のところ、流山市教委及び流山市からはそうしたことにつながる積極的な発言は聞かれません。やはり、組織の長である教育長はご自身の見解を述べられるべきだと思いますし、教育長や教育委員を専任している市長にはリーダーシップをとってご対応いただきたいと思います。

流山市レベルでの再発防止策については、まずは流山市で考えてほしいと思います。他方、今回の経緯の中では、県教委や文部科学省による流山市教委への指導が、実質的に機能しなかったということがあります。県議の方々からは、千葉県いじめ防止対策推進条例(以下、「県条例」とします。)の見直しも含めて考えたいというお話もいただいています。そこで、今回の件を受けて、千葉県いじめ防止対策条例をどのように改正すれば、県教委から市教委への実質的な指導が可能になったのかを検討してみたいと思います。

1)県の責務

県条例では、第5条で県の責務を定めていますが、市町村との関係については、「市町村その他の関係者と協力して」施策を総合的に策定し、実施する責務を負うとされているだけであり、市町村のいじめ防止対策について確認し指導するという点が責務として示されていません。市町村教委が不適切な対応をとりうることを前提とすれば、県には市町村のいじめ防止対策が適切に実施されているかを確認し、必要に応じて指導することを責務として負わせるべきでしょう。

2)市町村の役割

県条例では第6条で市町村の役割として、施策を作成し実施する、必要な措置を講じるということが書かれているだけで、実質的な義務はほとんど課されていません。これでは、流山市教委のように、法令を認識しないままの対応についてですら、県条例は無力です。たとえば、いじめ防止対策推進法その他の関係法令を遵守して必要な措置を講じ、法令に反する対応がないかを自ら点検することを責務として課すくらいのことがあってもよいように思います。

3)相談体制

県条例では第13条で相談及び情報収集体制の充実を掲げていますが、抽象的、一般的に「充実を図るものとする」とだけ記されています。ここに、市町村や県におけるいじめ問題への対応が法令に違反することが疑われる場合について相談を受ける窓口を設け、法令違反の対応に対する相談を確実に受けられるようにするという項目が追加されるとよいと思います。

4)いじめ問題対策連絡協議会

県条例では第19条においていじめ問題対策連絡協議会の設置を定めています。私も構成員として出席していますが、多くの関係者が出席する大変重要な会議です。しかし、この会議には市町村教委関係者は出席していません。すべての市町村から出席を求めると人数が多すぎるかもしれませんが、各教育事務所管内から輪番で市町村教委の担当者が出席し、できれば近隣の地域とも情報を共有する市町村連携の体制をとれるようにできるとよいと思います。この会議に出れば、市町村だけにしか通じない対応を改めようという意識が、多少なりとも担当者には生まれてくると思われます。

5)いじめ対策調査会

県条例第20条にあるように、県にも流山市と同様に、いじめ対策調査会が設置されています。しかし、この調査会が市町村教委のいじめ対応について実質的な検討ができる状況にないと思われます。調査会で市町村レベルの対応状況を精査すること、市教委への指導のあり方について調査会が県教委に意見すべきこと等を入れ、この調査会が市町村レベルのいじめ対応について実質的に機能するようにする必要があると思われます。(見直して内容を修正しました。)

6) 管理職・主任等への研修(ご意見をいただき、追記しました)

県条例第15条では人材の確保及び資質の向上を掲げており、教職員への研修の充実も挙げられています。しかし、流山の状況を見ると、管理職や主任等、学校を代表していじめ問題に対応する人の資質に問題が見られます。こうした人が市教委の指導課などに異動する可能性も含めて考えると、千葉市以外の市町村立学校の教員の任命権者である千葉県が、管理職や主任に対してコンプライアンス、保護者対応、第三者委員会等の運営方法、管理責任等について、具体的な事例(たとえば流山市の事案を教材化する)に沿って、協働学習形式で学ぶようなことが行われる必要があります。この意味では、単に教職員の研修の充実ということだけでなく、管理職や主任クラスへの研修の充実ということを条例に含めることが検討されるとよいでしょう。

 

2019.10.24

流山市教育委員会は資料を確認せずに嘘をつく

10月21日に流山市教育委員会の法令違反かつ不適切ないじめ問題対応に関して記者発表をしたところ、多くのメディアで報じられ、多くの方からご連絡をいただいています。

30年前に流山の小学校で教員からの虐待被害を受けていた宇樹義子さんは、この問題を受けて、ブログに「流山市教委いじめ不適切対応問題を受けて ―30年前に流山市の小学生だった者より」という記事を書いてくださいました。宇樹さんは、


「空気」が、「皆と同じであれ、集団の同質性を守れ、異なった者を排除しろ」と言えば、彼らはそうする。
「空気」が、「快活であれ、いつも強くあれ、弱音は吐くな」と言えば、彼らはそうする。
「空気」が、「優れた者/まともな者以外は痛めつけろ、殺せ」と言えば、彼らはそうする。
「空気」が、「常に世の中の役に立つものであれ、世の中に『迷惑』をかける者は死すべし」と言えば、彼らはそうする。
「空気」が、「目上の者にたてつくな」と言えば、彼らはそうする。

と書かれています。流山市教育委員会や同様の対応をとる学校、教育委員会にもあてはまる鋭い指摘だと思います。「空気」が人を傷つけ、場合によっては殺してしまうのです。熱心な教師にこそ、こうしたリスクがあります。

他にも多くの方から、流山市教委や市立の学校において、いじめ、体罰等の被害を受け、まともに対応してもらえなかったという声をうかがっています。流山市教委は、今回指摘した案件だけでなく、過去の案件を洗い出し、そのすべての被害者に対して謝罪、名誉回復、支援等を行うべきではないでしょうか。

 

各報道機関に流山市教委からのコメントが掲載されていますが、さすがにきちんと指摘しなければならないと思いますので、指摘させていただきます。流山市教委は流山市いじめ対策調査会に対して、いつ調査を委託したのかという問題についてです。

教育新聞の記事では、市教委のコメントが「いじめの重大事態を報告した17年3月の臨時会で調査を依頼したつもりでいた。調査会の委員と市教委の間に誤解があった」と掲載されています。教育新聞が間違っていないとしたら、このコメントはあまりにもひどいです。というのは、2017年3月に調査会の臨時会は開催されていないからです。

当時の経緯はこうです。

3月8日 調査会定例会開催。深刻な案件が発生しているという第一報の説明はあった。(実はこの頃、市教委が重大事態認定をする根拠となった自殺企図があった。)
3月30日 市教委が重大事態認定。
4月28日 調査会臨時会開催。

3月中に臨時会は開催されておらず、3月に臨時会があったというのは明らかな誤りです。たしかに3月8日に本件について説明はありましたが、これはまだ第一報であり、市教委が重大事態認定するのはこの日から22日も後。3月8日の定例会で重大事態認定がなされたはずはありません。

昨日のTBSの「グッとラック!」で紹介された市教委のコメントでは、4月に調査会に委託したつもりだったとなっていました。これならまだ話はわかります。4月28日の臨時会のことを言いたいのだろうと思います。

たしかに、4月28日は本件への対応について審議がなされています。ただ、重大事態の調査の依頼はありませんでした。

このことについては、証拠があります。7月12日に、「平成29年度 いじめ対策調査会への報告会①」という会合が開かれていて、市教委作成の議事録があります。これは、本来調査会の臨時会を開催すべきだったのが、日程調整がうまくいかず、若干名の調査会委員がバラバラに集められていじめ事案への対応状況について報告を受けた会合です。この①には私も出席しています。この議事録には、重大事態としての調査をどう進めていくかに関する議論が書かれており、私からは市の条例に沿って調査を行う必要があること、そして調査会に調査が委託されれば最優先で行うつもりがあることを述べています。市教委から、早急に動いていきたいという言葉があって会合が終わっています。こうした経緯があって、8月2日開催の臨時調査会において、市教委から調査会に調査が委託されることになるのです。

この7月12日の会合の議事録は、市教委が作成したものです。こうした文書で経緯を確認すれば、4月の段階で調査委の依頼をしていたなどという説明はできないはずです。そもそも、市教委が内容を確認した上で提出した中間報告書でも、市教委が調査会に調査を委託したのは平成29年8月2日と明記してあります。中間報告書に関して事実の間違いはないと市教委は言っていたのであり、今になって3月あるいは4月に委託したつもりだったと言うのはあまりにもひどいと言わざるをえません。

 

なぜこうなるのか。昨日の記事では市教委が法令を見ないということを指摘しましたが、見ないのは法令だけでなく記録も見ないのです。市教委の担当者としては、報道機関に対してできる限りの説明をしているのであり、そこに嘘をつく意図はないと思います。しかし、記録を見ずに、当時の担当者の聴き取りだけをもとに回答していると思われます。当時の担当者の思いとしては、4月に依頼したつもりだったということなのかもしれません。しかし、記録を見れば、市教委としてその説明には無理があることが明白です。記録を見ないで担当者の言い分をそのまま発表しているので、結果的に嘘が生じるのです。

市教委がこのように担当者の思いだけをもとに説明し、結果的に嘘をつくことは、私たちが行った調査の過程でも見られました。事実関係が不明な点について市教委に質問して回答を得ることがしばしばありましたが、どうも他の要素と整合しない回答が多くありました。そうしたことがあると、あらためて根拠となる資料を出してもらい、資料との不整合があるとそれをまた確認するというような作業を行わなければならなくなっていました。当初は、市教委の回答に嘘が含まれることなど想定していなかったので、こうした作業が想定外に増え、調査の負担が増大しました。

市教委のこうした状況は、いじめや体罰の被害者への対応にもきっと表れていたはずです。被害者側の方々から、市教委に嘘をつかれたという声を多く聞いています。資料を確認せず、担当者の思いだけで説明するので、市教委や学校の対応が合理化されやすく、被害者側ではひどい嘘をつかれたと受け止めるしかなくなるのだと考えられます。

 

今回の記者発表をするにあたって、私は約1ヶ月前に、市教委の指導課長に会見内容をすべてお知らせし、何かあれば指摘してほしいとお願いしていました。指導課長からは、「こちらの認識とは異なる点がございます」という回答があったので、具体的に教えてほしいとお願いしました。ところが、指導課長からは「こちらの資料および担当者からの聞き取りから当方としては、認識が異なるとお伝えいたしました。どこが、どのようにという点に関しては、このメールで議論する意思はありません。」という驚くべき回答が返ってきたのです。結果を見ると、認識が異なる点というのは、調査会に調査を委託した時期だったのでしょうが、市教委ではどの資料をもとに3月あるいは4月に委託したと判断したのでしょうか。「議論する意思はありません」などとおっしゃらずにどのような資料をもとにどのような認識をおもちなのか言っていただければ、私からも7月12日の議事録などに触れ、認識を合わせることができたはずであり、残念です。

しかし、この指導課長のメールの文面は、市教委のいじめ問題等についてのコミュニケーションのあり方を象徴的に示すものとして貴重です。何か指摘されても「認識が違う」として具体的な説明を拒否し、資料も確認せず担当者の思いだけの「認識」をただ守ろうとしている状況がよくわかります。被害者側や報道機関は、市教委のコミュニケーションがこのようなスタイルであることを理解した上で、市教委とコミュニケーションをとる必要があります。市教委は資料を確認せずに嘘をつくのです。

2019.10.23

教育委員会がなぜ法令違反の対応をしてしまうのか

10月21日(月)に発表させていただいた流山市教育委員会の法令違反かつ不適切ないじめ問題への対応に関して、どうして教育委員会が法令違反の対応をしてしまうのかと、記者の方などから繰り返し問われます。私が流山を含めいくつかの教育委員会と関わらせていただいた中で考えていることを書かせていただきます。

 

1)孤軍奮闘

流山市教委の場合、いじめの問題に対応するのは、指導課に配置された1名の指導主事でした。何かがあれば、指導課長や課長補佐、他の指導主事がサポートするということになります。

私が流山市いじめ問題調査会(以下、「調査会」)の委員をつとめていた4年間で、担当指導主事をなさった方は3名おられます。どの方もいじめ問題に真摯に対応しようと、大変熱心に仕事をされていました。

ただ、担当指導主事は常に孤軍奮闘しているように見えました。あまり深刻でない問題であれば、一人で学校と連絡を取りながら対応すれば、それで十分なのかもしれません。しかし、深刻で前例がないような事態に対応するには、市教委内でさまざまな検討が必要であり、役割分担も必要です。しかし、組織風土として、組織できちんと相談することがあまりできていなかったように思います。

2)物言わぬ役職者

上記とも関連しますが、本来、いじめ問題への対応については指導課長が責任をもち、最終的な責任は教育長にあります。しかし、私が関わった指導課長にはリーダーシップをとる様子はほとんど見られませんでした。

本来、調査会の委員を委嘱する際には、責任ある立場の人(指導課長なり教育長)が、各委員にしっかりと挨拶し、いじめ問題が起きたら調査にあたってもらう重要な組織の委員を委嘱していることを説明し、協力を求めるということがあるはずです。しかし、歴代の指導課長からはそうした話を聞いたことがありません。教育長に至っては、重大事態の調査がかなり大変な状況になっても、調査会委員に対して直接話をされることは一切ありませんでした。

いじめ問題への対応の経緯についても、指導課長は通り一遍のことしか把握していないようで、深刻な問題についてリーダーシップをとり、担当指導主事と綿密に打合せをしながら対応しているとは考えにくい状況でした。

結局、指導課長や教育長といった役職者は、現場に近い面倒な問題について汗をかくことはしない立場ということになっているようで、何かがあっても「認識が違う」「認識が甘かった」というような大まかな説明だけして、やがて任期が終わるという状況になっているようです。こうした役職者には前例と違う対応は期待できませんから、いじめ問題に真摯な対応をしない例が重なればそれが変わることはないわけです。

3)外部との交渉の弱さ

こうした市教委の状況は、外部との交渉の弱さにつながります。

調査会の委員は教委から見ると外部の専門家です。こうした外部の専門家に対して、当初、担当指導主事はひどく遠慮がちであるように見えました。このことは、会議の日程調整に端的に表れています。委員の日程をきちんと調整して、多くの委員が出席できる日程で会議を設定するということができないのです。遠慮がちに日程を通知し、出席できないと返答するとそれ以上の調整が行われることはありませんでした。

また、会見で発表したように、調査会発足から2年以上にわたって会長が決まっていなかったのですが、担当指導主事はこのことに気付いていながら、調査会委員らに対して、出席者は少ない中だが会長を決めてほしいと言うことができていませんでした。

重大事態の調査を調査会に委託したつもりだったのにできていなかったということが出てきていますが、これも調査会の委員に対して明確に物を言えないことの反映だと考えられます。本来、会長の決まっていない組織に依頼をするというのは無理がありますし、調査を依頼したのであれば教委が資料を提出したり関係者の聴取の日程を調整したりといった業務を担う必要がありますが、そうしたことはなされていませんでした。本当に調査を依頼したつもりなのであれば、もっと具体的に調査をどう進めるかについて話がなされなければならなかったのですが、そうしたことができていないのは、ある意味で交渉が下手だということの表れなのだと思います。

4)法令を見ない

そして、市教委の方々は法令を踏まえて動くことがあまりないように思われます。孤軍奮闘する指導主事は、法令を確認せず、上司の考えを忖度したり、被害者側からの要望に応えたり、調査会の委員にうかがいを立てたりして問題に対応するのですが、法令に基づくということがありません。指導課長も、法令に関係する説明ができておらず、法的な理解に関して問うても誰も答えられない状況が続きます。

当然、私たち調査会では法令に基づいた対応をしているので、市教委にも法令に関係する話をする機会がありますが、重大事態の調査が始まっても、市教委担当者は法令を確認して話す様子はなく、何度か「あなたたちが作った条例を読んでいないんですか」というお話をしたことがあります。

教育行政を担う市教委が法令を見ないということが想像されにくく、外部の関係者は市教委は当然法令に従って動いているということを前提にします。外部の関係者が実は法令を見ていないのではないかといことに気付くまで時間がかかり、気付いた時点では事態はかなりこじれているということになります。

5)組織風土の問題

以上のように、流山市教委には組織風土に深刻な問題があります。すなわち、担当者は孤軍奮闘し、役職者は問題に深入りしないため、組織で連携した対応ができません。しかも、法令を見て対応されることがないため、容易に法令違反が起こります。外部の人とうまく交渉することもできません。

このような状況ですから、たとえばいじめ被害や体罰被害を保護者が申し立てても、熱心そうな指導主事がきちんとやってくれるのかと思えば、法令違反の場当たり的な対応を熱心にされるだけということになり、問題がより複雑にこじれることになるわけです。

本来、行政組織が法令に従って動くべきことは当然ですし、法令に従わなければ判断の根拠を示すことができない場合が多いはずです。そして、前例のない難しい案件に対応するためには、組織内で上下関係なく相談をするとともに、外部の専門家とも遠慮なくコミュニケーションをとり、多様な知見をふまえる必要があります。

 

今、全国各地で教委が法令違反のいじめ対応をしていることが報じられています。ここで述べた状況は決して流山市だけのことではなく、法令違反が指摘されている多くの教委に共通することではないでしょうか。

教委の個々の担当者は決して悪人ではないでしょう。しかし、組織を動かせなかったり法令を見なかったりする担当者は、いかに熱心であってもそれでよいということにはなりません。他の組織との人事交流を進める等して、組織改革を早急に行う必要があります。

流山市教委は、最終報告が出たら再発防止策をとると説明しているようです。しかし、調査会の委員が全員退任した後の新たな調査会が調査を再開して最終報告を出すにはまだ時間がかかるはずです。そもそも現在の調査会の委員のプロフィールが明らかにされておらず、被害者も人選について同意しないのではないかと考えられている状況です。私たちが出した2回の調査報告書で、教委の問題は十分に指摘されています。最終報告を待つというのは問題の先送りに過ぎません。ぜひ、今すぐ再発防止のための組織改革を始めてほしいと思います。

2019.10.21

流山市教育委員会の法令違反かつ不適切ないじめ問題対応について

本日2019年10月21日、文部科学省記者クラブにて、流山市教育委員会の法令違反かつ不適切ないじめ問題対応について公表する記者会見を行いました。


文部科学省が発表したように、小中高校のいじめ認知件数は過去最高を更新しており、いじめ防止対策推進法が定める「重大事態」の件数も昨年度602件と増加しています。そして、神戸市、埼玉県川口市等で、教育委員会が重大事態に対して法令違反あるいは不適切な対応をしている例が続出しています。こうした状況を背景にいじめ防止対策推進法の改正の議論がなされていますが、現状ではまだ改正への道筋は定まっておらず、また改正したとしても教委が法令に従わないのであれば実効性は担保できません。

重大事態への対応のあり方の問題は、被害者が死亡した事案では注目されがちですが、被害者が心身にひどい被害を負ったり不登校になったりして現に苦しんでいる事案はあまり大きく報道されることはありません。しかし、死亡事案で注目されているのと同じかそれ以上ひどいレベルでの対応を行っている教委はまだまだあると考えられます。

 千葉県の流山市教委は、いじめ重大事態に関して、以下のように法令違反あるいは不適切な対応をとってきました(主なもののみ示します)。

・いじめ重大事態に該当する事案について、重大事態と認めず、調査を行わなかった。

・いじめ重大事態と認定した事案について、条例に従って附属機関である流山市いじめ対策調査会(以下、「調査会」とします。)に調査を付託することを怠り、4ヶ月以上にわたって対応を放置した。

・被害者側や調査会との約束に反して被害者側との関係を悪化させる行為をとり、調査会による調査の妨害を行った。 

市教委の附属機関である流山市いじめ対策調査会において、こうした市教委の対応について繰り返し指摘をし、改善を求めてきましたが、いまだ改善がなされない状況があります。そうした中で、本年5月の任期満了をもって、すべての委員が退任するという状況に至っています。市教委のこうした対応によって、被害を受けた方やご家族は今でも大変な苦しみの中にあります。

記者会見で公表した資料は以下の通りです。

発表資料

補足資料

被害者保護者からいただいたコメント

 

市教委が法令に反し、調査を妨害するような状況にあることを多くの方に知っていただき、事態の改善と被害者の支援が適切に行われるようご理解ご協力をいただきますよう、お願いいたします。

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