市議会教育福祉委員会協議会で確認された流山市教委の法令違反かつ不適切ないじめ問題対応
私は10月21日、文部科学省内にて記者会見を行い、流山市教委がいじめ問題について法令違反かつ不適切な対応をしており、被害者が今でも苦痛の中にあるということを公表しました(記者会見の内容等はこちら)。
これまで市教委は私のこうした指摘に対して非を認めず、責任逃れのような発言を繰り返してきました。しかし、12月16日、市議会教育福祉委員会協議会(つまり正式な会議でなはない会ということでしょう)で高橋あきら議員による質疑がなされ、その質疑応答の内容がこちらで公開されています。「質疑通告は、提出期限通り「11日正午」までに提出していたのですが、回答準備がされず、残念です」とあり、回答内容は不十分なものと思われますが、それでも私が記者会見で指摘した内容について、教委がほぼ事実と認めた内容となっています。
以下、具体的に、私が指摘した内容についてどのようなことが認められたのかを見ていきます。
私が法令違反として指摘したのは、以下3点でした。
- いじめ防止対策推進法第28条第1項が定める重大事態の要件を満たす事案が発生していたにもかかわらず、同事案を重大事態と認めず、重大事態としての調査を実施しなかった。(複数年経過後、調査会の指摘等を受け、市教委はあらためて重大事態と認めた。)
- 市条例第17条第3項において、重大事態が発生し、市教委が調査を行う場合には、調査を調査会に依頼することとなっている。しかしながら、重大事態と認め、市教委が調査を行うこととした案件について複数ヶ月の間、調査会に調査を委託せず、市教委職員が関係者に対する調査を一部行った。
- 市条例第16条第6項で、調査会の会長及び副会長を委員の互選で決めることになっているにもかかわらず、平成27年6月から平成29年5月までの最初の委員任期期間中には会長及び副会長を決定しなかった。なお、会長及び副会長の決定がなされたのは平成29年8月であり、それも委員からの指摘があって選出することになったものである。
1については、これまでの市教委の説明では被害者側代理人と相談して重大事態認定しなかったということであり、法令違反であったことは認められていました。今回の質疑応答では、「当時の記録によるやり取りのメモしか残っていない。また保護者から「変更」「要望」とはなかったと記憶している」とあり、これまでの市教委の説明の根拠は当時のメモのみに基づいていたことが明らかになりました。法令違反を認めながら、なぜそうした法令違反が生じたのかについて丁寧な事実確認を行うことすらできていなかったことを、市教委は認めたことになります。
2については、これまでの市教委の説明では平成29年3月あるいは4月に調査会に調査を依頼したつもりだったとされていましたが、今回ようやく同年8月2日に口頭で依頼したという回答がなされています。これまでの回答が事実関係を隠蔽し、自分たちの責任をごまかそうというものであったことが確認されたことになります。このように簡単にわかる事実さえ素直に認めない体質が、流山市教委にはあります。
3については、私の知る限り、これまで市教委は認めていませんでした。今回初めて、正副会長の選出が行われたのが平成29年8月2日であることを認めたことになります。すなわち、平成27年6月の流山市いじめ対策調査会設置以降、2年以上にわたって正副会長の選出を怠っていたことが明らかになりました。このことは、2とも関係します。すなわち、市教委は重大事態認定後に調査会に調査を委託したつもりだったと言っていますが、正副会長の選出すら行っていない組織に委託したつもりでいたことになります。重大事態とまともに向き合おうとしていなかった状況が、確認できたと言えます。
そして、私が不適切な対応と指摘したのは、以下2点でした。
- 市教委の特定の担当者といじめ問題の関係者との間に敵対的な関係が生じたことから当該担当者をその関係者と直接接しないようにすると調査会会議において担当の役職者が明言したにもかかわらず、この約束を反故にし、その後も繰り返し当該担当者が関係者と接するようにし、関係者の状態を悪化させ、重大事態調査の進行を妨げた。
- 令和元年5月当時、調査会委員は市教委の対応に疑問を抱き、5月末の任期満了後に委員継続の意思がないことをそれぞれ告げていたにもかかわらず、留任を説得する等の対応をとらなかった。当時、重大事態の調査が途中であったにもかかわらず、現在に至るまで旧調査会メンバーから現調査会メンバーの引き継ぎは行われておらず、実質的な調査は停止しているものと思われる。
1については、市教委として妨害した認識はないとずっと言われていますが、今回の質疑応答でも「たまたま他の職員がいないところへ保護者から電話があり、出てしまった」とあります。少なくとも、該当職員が関係者(市教委は「保護者」と言っています)と直接関わったことは認められたこととなります。接触させないという約束をしたのであれば、たまたま電話に出た場合には「申し訳ありません。私は対応させていただかないことになっていますので、他の者が対応いたします。今は他の者が不在ですので、こちらから連絡させます。」などと話してすぐに電話を切るように準備しておくべきです。そうしたことを怠っていたことこそが、調査の妨害となったのです。今後はぜひ、該当職員による接触がいかに関係者との関係を悪化させたのかについて、事実確認を行ってほしいと思います。
2については、メールのやりとりの開示が求められていますが、「メールのやり取り、全文開示は、執行部とも個人情報保護の観点で相談して回答する」となっています。質問通告後に私に許可をとって公表すればよかったはずですが、なぜ個人情報保護を持ち出すのでしょうか。以下、該当するメール(わずか2件ですが)を全文開示します(こちらでもほとんど開示していましたが、私に一部を隠す意図はないので、ここでは市教委の担当者名のみを伏せ、全文開示します)。
○指導課担当指導主事からのメール(平成31年4月24日)
藤川 大祐 様
日頃より大変お世話になっております。
流山市いじめ調査会の皆様の任期が令和元年5月31日をもって終
受け、現在、次期いじめ調査会について検討しているところではご
まずは藤川先生におかれては、ご自身のお気持ちと現在の状況を踏
を継続していただけるか否かについて、どのように考えておられる
メール致しました。
どうぞ、よろしくお願い致します。
○藤川からの返信(平成31年4月24日)
○○様
藤川です。ご連絡ありがとうございます。
私としては、現状のままでは継続は難しいと考えています。率直に
また、私個人の状況として、1年前より附属中学校長併任となり、
こうした状況であるため、特に市教委の皆様が私に継続を望まれな
よろしくお願いいたします。
上記藤川のメールに対して、市教委側からは返信がありませんでした。少なくとも私に関しては慰留がなされていなかったことがご理解いただけると思われます。
さらに、10月21日の記者会見前のやりとりについても、議員が開示を求めておられますので、以下、開示いたします。
○藤川からのメール(令和元年9月26日)
流山市教育委員会 指導課長 西村様
千葉大学の藤川です。私どもが流山市いじめ問題調査会を退いてか
私としては、市教委がなされたこれまでの法令違反あるいは不適切
私としては、過度にセンセーショナルに扱われ、市の行政に混乱を
添付の文書の内容は、すべて第二次中間報告書に含まれている内容
私どもがこれまで真摯に取り組んできたことに、これからでも貴教
(添付ファイルはこちら)
○西村指導課長からの返信(令和元年9月27日)
藤川大祐 様
ご無沙汰しております。藤川様には、いじめ対策調査会にて大変お
流山市教育委員会にてメールの内容を確認をさせていただきました
藤川様がご指摘されているいじめ問題対応を確認させていただいた
十分にご理解していただいていることと思いますが、公表されるに
なお、すでに新たな流山市いじめ対策調査会を実施しており、最終
流山市教育委員会
○藤川からの返信(令和元年9月27日)
○藤川からの再度のメール(令和元年10月7日)
西村様
千葉大学の藤川です。前回のメールから10日となりました。1)
よろしくお願いいたします。
○西村課長からの返信(令和元年10月9日)
藤川 大祐 様
昨日まで出張で外出していたため失礼しました。
1)の件に関しては、こちらの資料および担当者からの聞き取りか
異なるとお伝えいたしました。どこが、どのようにという点に関し
議論する意思はありません。
2)に関して、「正当な理由」かどうかについては慎重にご判断い
○藤川からの返信(令和元年10月9日)
こうしたメールのやりとりには、流山市教委の姿勢がよく表れていると思いますが、いかがでしょうか。
以上のように、私が記者会見で指摘した事実については、ようやく市教委がほとんど認めたということが確認できたと言えます。今後は、なぜこのような法令違反かつ不適切な対応がなされたのかを検証し、責任の所在を明らかにし、組織体質の抜本的改善が図られ、さらには市教委のこうした対応で苦しめた被害者側への支援をしっかりと進めるべきです。
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