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いじめ

2017.07.14

脱いじめ傍観者プログラム「私たちの選択肢」無料配布を開始しました

本日千葉大学からリリースがなされたように、私たち研究グループがストップイットジャパン等の協力のもとで開発した脱いじめ傍観者プログラム「私たちの選択肢」について、指導案冊子つきDVDの学校等への無料配布を開始しました。このプログラムは、今年度より千葉県柏市の全中学校1年生全クラスで使用されているものです。

実効性のあるいじめ防止対策には、傍観者だった立場の児童生徒が行動を起こすことが重要です。そしてそのためには、クラスにいじめを心配する雰囲気をつくっていくことが有効です。「私たちの選択肢」は、どこかの中学校の出来事から入り、いつのまにか自分たちのクラスの雰囲気や個々の児童生徒の考えが問われる教材で、当事者意識をもって考えられるようになっています。

ぜひ多くの学校等でご活用いただきたいと思います。

Sentakushi_2

▽千葉大学からのプレスリリース
http://www.chiba-u.ac.jp/others/topics/others/topics/img/2017/20170714sentaku.pdf

▽「私たちの選択肢」特設ページ(ダイジェスト動画を掲載しています)
http://stopit.jp/workshop

2017.05.28

いじめ防止対策としての学級解体論について

前のエントリーにもあるように、千葉県柏市で脱いじめ傍観者授業といじめ通報アプリを公立全中学校で導入することが発表され、各所で報道されています。私は、脱いじめ傍観者授業のプログラムを監修するという立場で、この取り組みに関わっています。

この件に関して、評論家の宇野常寛さんとの間で少々やりとりをさせていただいています(下記参照)。

https://twitter.com/wakusei2nd/status/868498960037535745

論点がいくつかありますので、私なりに整理しておきたいと思います。

1. 宇野さんがおっしゃるように、学級のような閉鎖的な集団があることがいじめを発生させているということは疑いえないことであり、こうした集団に無理に所属させないようにすることがいじめ問題の改善に寄与すると考えられます。内藤朝雄さんのこれまでの議論にも通じます。

2. 学級の機能をいきなりゼロにすることは非現実的で、具体的な策としては、宇野さんがおっしゃるように、学校選択制、科目選択制、担任選択制、学級で取り組む学校行事の大幅縮小等と考えられます。こうした取り組みは基本的にいじめ防止に寄与すると思われます。しかし、こうした方向性について、以下3点を述べておく必要があります。

i) こうした方向をとっても、現実にひどいいじめが起きているケースはあります。特に学校選択制については、先進的に導入している東京都品川区でいじめによると考えられる自殺事案が連続して生じています。科目選択制の学校においては基本的にいじめは生じにくいようですが、科目選択制をとっている通信制高校でいじめられているという人もいます。限られた事例から学級機能を弱める方向がいじめ防止に寄与することが否定されるわけではないですが、学級機能を弱めることだけでいじめ問題が解決すると考えるのは単純すぎます。職業選択の自由があるはずの職場でいじめ=ハラスメントの問題が絶えないのと同じで、どんな制度をとったとしても、学校においていじめ対策は必要です。

ii) 学校選択制や教科選択制等については。実質的な選択を可能にするには学校や教員について豊富な資源が必要です。しかし、実際には国も地方も財政が苦しく、教育に豊富な資源を投入することは困難です。また、児童生徒や保護者が選択するにはそのために豊富な情報が必要であるはずですが、そうした情報を供給する仕組みの構築は困難です。この結果、選択制をとったとしても、選択の範囲が限定されてしまいがちです。

iii) 学級機能の縮小に関しては、学級が期待されている機能を縮小してよいかを検討する必要があります。学校から見れば、学級は担任教員によって児童生徒を管理する仕組みであり、他の児童生徒の考えに触れながら学習を進める場でもあります。児童生徒や保護者から見れば、学級は児童生徒が帰属する集団であり、人間関係を構築したり担任教員による継続的な指導を受けたりする場です。単位制高校でもホームルーム機能を重視するところが多く、大学や専門学校においても学級担任のような制度が近年重視される傾向があり、児童生徒や学生が帰属する集団は管理や相互扶助のために必要と考えられています。学級機能を縮小する議論においては、学級が期待されているこうした機能をどう考えるかについての検討が含まれるべきです。

3. 現状では、学級機能を弱める方向の議論は強く支持されているとは言い難く、今後議論を重ねるにしても推進していくには時間がかかります。そして、仮にかなりこうした方向での変化が進んだとしても、いじめの問題は残ると考えられます。ですから、学級機能をどうするかという問題とは別に、現に今起こりうるいじめについてどう対策するかが論じられる必要があります。私は教育方法学の研究者であり、授業プログラムや教材の開発を専門としていますので、現に今起こりうるいじめの防止に寄与する授業プログラムや教材の開発に取り組んでいます。具体的には、以下の点を重視した授業が必要だと考えています。

・学級内で互いの話をじっくり聞く機会を設けること。
・いじめや人間関係に関して、学校外の人と対話をする機会を設けること。
・「空気が読めない」「自分勝手」に見える態度をとっている人がいても、そのことを理由にその人に対して嫌がらせをすることは正当化されないということを理解できるようにすること。
・周囲で見ている観衆や傍観者はいじめの進行を止めることが可能であることを理解できるようにすること。自分の安全を守りつついじめを止める方向でアクションをとる方法はさまざまあることを理解できるようにすること。
・こうしたことを、陳腐で意図が読める教材でなく、ある程度以上のクオリティで新鮮な印象を与える教材を使った授業で実現すること。

私が関わっている取り組みについて詳しくは、以下に記されています。

▽千葉県市川市における地域住民参画によるいじめ防止授業の取り組み
http://ace-npo.org/fujikawa-lab/file/pdf/other/2014/2014fujikawa.pdf?cd=00116414
▽千葉県柏市における脱いじめ教育の取り組み(ブログ記事)
http://dfujikawa.cocolog-nifty.com/jugyo/2017/05/post-c45d.html
▽ソフトバンク及び企業教育研究会による「みんなで考えよう、ケータイ・スマートフォン」
http://ace-npo.org/info/kangaeyou/kyouzai/kangaeyou4.html

宇野常寛さんは私が敬愛する評論家であり、教育に関しても大いに示唆をいただきたいと願っています。私の著書『授業づくりエンタテインメント!』にもご登場いただいており、今回の件は『授業づくりエンタテインメント!』でも少し議論していたことの延長と言えます。今後、さらに議論させていただく機会があればと願っています。

2017.05.23

脱いじめ傍観者教育用教材「私たちの選択肢」の作成と柏市での授業実施について

このたび、千葉大学、敬愛大学、千葉県柏市、ストップイットジャパン等の連携によって、脱いじめ傍観者教育用動画教材「私たちの選択肢」を開発し、この教材を用いた授業を柏市立全中学校1年生全学級で実施することを発表しました。授業の実施は、NPO法人企業教育研究会が担当します。柏市ではあわせて、匿名通報サービスSTOPitを全中学校で導入します。

5月22日(月)、柏市立土中学校にて、報道機関向けの公開授業を実施しました。10社以上が来てくださり、すでに多くのメディアで取り上げられています。以下、短期間で期限切れになるものもあると思いますが、記事等へのリンクを貼っておきます(順不同)。

▽NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170522/k10010990901000.html
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170523/k10010991471000.html
▽朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASK5Q43XPK5QUDCB00F.html
▽ICT教育ニュース
http://ict-enews.net/2017/05/23kashiwa/
▽教育新聞
https://www.kyobun.co.jp/news/20170522_03/
▽東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201705/CK2017052302000186.html
▽読売プレミアム
http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/news_20170510-118-OYT1T50144/search_list_%25E6%259F%258F%25E5%25B8%2582__
▽千葉日報
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/410096
▽毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20170523/ddl/k12/100/081000c
▽J-CASTニュース
https://www.j-cast.com/2017/05/23298720.html?p=all
▽産経ニュース
http://www.sankei.com/region/news/170603/rgn1706030023-n1.html
▽内外教育(6月2日号に記事が掲載されています)
http://www.jiji.com/service/senmon/educate/backnumber.html

いじめ防止対策推進法が施行されてまもなく4年になりますが、まだまだ実効的ないじめ防止対策が進んでいない状況があります。特に、LINE等の普及によって、ネットパトロールでは見えないネットいじめが広がり、子どもたちの中でいじめを止める動きが広がらなければ、いじめの深刻化を防ぐことは困難です。私たちは質の高い教材の開発を通して脱傍観者教育を推進し、実効性あるいじめ防止対策を広げていきたいと考えています。

(追記)
脱いじめ傍観者教材「私たちの選択肢」の柏市全中学校1年生全クラス実施の発表を受けて、本日も取材や問合せを多くいただいています。研究成果としての教材ですから、無料で広く使っていただけるよう配布を準備しています。近日中に具体的なアナウンスを行えるようにします。

2015.11.06

いじめ防止対策を次のステップへ

名古屋市の中学生が自殺した件で、アンケート結果から20名の生徒がいじめの様子を見ていたことが明らかにされた。この件で私は昨夜のNHK「ニュースウォッチ9」の取材を受け、話をさせていただいたが、テレビ放送の宿命で発言の一部しか放送されていないので、あらためてこの件についてコメントを書いておきたい。

2013年のいじめ防止対策推進法以降も、いじめによると考えられる自殺事件が続発している。しかし、学校の事前事後の対応の様子は変わってきている。その経緯は、以下の通りである。

2013年 いじめ防止対策推進法施行、国のいじめ防止基本方針策定。学校がいじめ防止基本方針を定め、いじめ防止対策の組織を置くことが義務づけられる。
2014年 校長が調査をせずに「いじめはなかった」と発言する等、いじめ防止対策推進法に反する学校の対応が目立つ(山形県天童市の件など)。
2015年7月 岩手県矢巾町の事件で、いじめ防止基本方針で定められているアンケート調査等の策を学校がとっていないことが問題に。

昨年までは、いじめ防止対策推進法に反する対応が目立っていたにもかかわらず、報道でそのことが大きく問題になることはなかった。しかし、今年夏の岩手県矢巾町の事件では、いじめ防止対策推進法にのっとった対策が適切にとられていないことが大きく取り上げられ、ようやく法にのっとった対策を行うべきことが当然と考えられるようになった。そして、今回の名古屋市の事件では、学校が定期的にアンケートを調査を行うなど、法にもとづいて学校が計画的、組織的ないじめ防止対策を行っていたことが明らかになっている。報道も、学校や教育委員会に批判的にならざるをえなかった。

これまでは、法にのっとっていじめ防止対策を進めるということを確認せざるをえなかった。だが、今回は法にのっとった対策を進めても事件が起きてしまい、これまでとは違うレベルで考えなければならなくなっている。

今回の事件でようやく、いじめ防止対策推進法にのっとったいじめ防止対策のあり方が具体的にどうあるべきかが問われたと言える。今回の事件で今言えることは、20名の生徒がいじめを見ていたのに、大人はいじめに気づけなかったところに課題があるということである。

これまでのいじめについての議論は、いじめが起きたかどうかを確認してから、そのいじめに対応するというものになりがちであった。しかし、それでは対策は後手にまわってしまう。当事者は、いじめをいじめだとはなかなか認めない。暴言、からかい、暴力、差別的な態度等、いじめかどうかは判然としなくてもいじめにつながる可能性がある事態が生じていたら、それを見た人は何かしなくてはならないのである。

しかし、子どもたちは放っておいたら大人に何も言ってくれない。何かあったときに念のために誰かに言えるようにすることを促すような指導が、日常から必要である。

私は千葉県市川市のいじめ防止対策に関わっており、いじめかどうかが判然としない状況に敏感になることを目指した教材を開発、提供している。アンケートだけでなく、こうした取り組みを教育課程に位置づけ、実施していくことが必要である。

論文 いじめ防止プログラム開発の試み−いじめか否かが判然としない架空事例を教材として−

2015.08.27

国のいじめ防止体制が問われている

岩手で中学生が亡くなった事件への対応が問題になって以降、いじめ防止のあり方についていろいろと話題になっています。岩手の事件では、学校のいじめ基本方針に定められた対応がなされていなかったことが問題となっています。いじめはどこでも起きうるものですが、自殺などの重大事態に至るためには、いくつもの不幸な条件が重なるのが一般的であり、「どこかで誰かが何かをしていたら」重大事態は避けられたはず…ということになります。この意味で、学校がいじめ基本方針を定め、必要な策をとることは、重大事態に至る可能性を大きく減ずるものと言えます。一部の策が実施されなければ必ず重大事態が起こるということはありませんが、重大事態に至る可能性を高くしてしまいます。だから、不作為の罪は重いのです。

岩手の事件を受けて、文部科学省はいじめの調査をやり直すよう全国の学校に指示したとのことです。私はこうした文部科学省の動きには大いに疑問があります。夏休みが終わっていじめ防止も含めた指導が大変なこの時期に、学校に対していたずらに負担を増やしてどうするのでしょう。人事異動も卒業もあり、前年度の調査をやり直すにも限界があります。そして、過去の調査をやり直すことは、必ずしも現在の問題の解決にはつながらないので、対応する教員には徒労感が大きいでしょう。

いじめ防止対策推進法は、各学校が計画的、組織的にいじめ防止対策につとめることを求めている法律です。文部科学省が一律に何かをさせるのでなく、各学校が「こうすればいじめを防止できるであろう」と考え、自律的に対策を進めることを求めているはずです。文部科学省がすべきことは、各学校に対して一律に何かをさせることではなく、各地域・各学校のいじめ防止対策の体制を検討し、不十分な点があれば明らかにして改善を促すことでしょう。仮に多くの地域・学校でうまくいっていない部分があるのであれば、いじめ防止対策推進法の改正や国の基本方針の修正を検討すべきです。

そもそも、これまでのいじめ防止対策がうまくいかずに繰り返し同じような問題が生じていたのですから、文部科学省のいじめ防止対策がうまく機能していなかったわけで、いじめ防止対策推進法ができて以降、文部科学省だってやり方を変えなければなりません。このために、国にもいじめ防止のための組織を設置して、各地域・各学校のいじめ防止対策のあり方を検証し、必要があれば国の方針を修正するようにという提案をし、実際に文部科学省にいじめ防止対策協議会が設置されるに至ったはずです。しかし、残念ながらこの協議会は開催頻度が低く、今回のような事態があっても何の発信もしていません。

子どものためになるはずの学校で、多くの子どもがいじめに苦しみ、死に至る事態が続いています。自ら作ったはずの基本方針を遵守しない学校があり、文部科学省も的外れなことばかりしています。文部科学省はいじめ防止対策協議会がきちんと機能するようにし、各学校・各地域のいじめ防止対策の点検と国の基本方針の再検討を進めるべきです。国の担当者たちが本気で子どもたちのために働こうとしているのかが、問われています。

2013.11.20

授業「学校と教育」2013年11月20日資料(いじめに関して)

 「学校と教育」の本日2013年11月20日の資料です。「ijime20131120.pdf」をダウンロード