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いじめ・学級経営

2014.02.28

いじめ対策の現在の局面について

警察がいじめ関連事件で摘発した件数が急増したという件について、朝日新聞と毎日新聞に私のコメントが掲載されました。以下の通りです。

朝日新聞 http://www.asahi.com/articles/ASG2V5148G2VUTIL022.html (ログインが必要)
〈いじめ問題に詳しい藤川大祐・千葉大学教育学部教授の話〉 大津の事件以降、いじめへの対策を抜本的に見直して、いじめを見過ごさないようみんなで取り組んでいこうという社会的機運が高まり、学校と警察の連携も進んだ。事件数や摘発された子どもの増加はその表れのひとつ。起きてしまったいじめを発見し、対応していく点で対策は前進していると言える。今後は、いじめをどう防ぐかが課題だ。学校の授業などを通じて子どもたちの認識を深め、いじめを発生させないような取り組みを進めていくことが重要だ。

毎日新聞 http://mainichi.jp/select/news/20140228k0000m040127000c.html
いじめ問題に詳しい千葉大の藤川大祐教授は「警察に委ねるべき事案は委ねるという対応が必要。警察に相談しないことは子どもに犯罪行為でも罰せられないという認識を生む恐れもある」と評価。

警察庁が発表した「少年非行情勢(平成25年1月〜12月)」はこちら。
https://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/hikoujousei/H25.pdf

2011年に起こった滋賀県大津市のいじめ事件が問題になって以降、いじめ問題についての抜本的な解決に向けた取り組みが進んでいます。朝日新聞のコメントで言わせていただいたように、いじめが生じた場合の対応については、犯罪の場合には警察に対応を委ねることをはじめ、重大事案が生じた場合には第三者委員会による事実確認を行う、本人や家族に対して不当に情報を隠さないといったことが進んでいます。こうした対応については、いじめ防止対策推進法に基づいて各学校がいじめ防止基本方針を定め、いじめに対応する組織を設けることによってさらに進むことが期待できます。

他方、いじめの発生を抑止する予防策については、まだこれからと言えます。いじめ防止のための授業の実施や学級経営の充実、教員のチームワークの構築、学校と保護者や地域とのコミュニケーションといったことが課題です。こうした点について、各学校がいじめ防止基本方針で具体的に位置づけられ、取り組みが進められることが必要です。

いじめに関しては、これまで同じような状況が繰り返されてきました。しかし、もう繰り返しは許されません。ここからが正念場です。

2013.10.05

「いじめ防止基本方針」について

 「いじめ防止対策推進法」が、6月28日に交付、9月28日にされました。この法によって、文部科学省が「いじめ防止基本方針」を定めることとなっており、今年8月より文部科学省に設けられた「いじめ防止基本方針策定協議会」において私は委員をつとめています。これまでほぼ毎週会議が開かれ、基本方針についての議論を重ねてきました。10月11日(金)の会議にて方針案がまとめられ、発表される見通しです。協議会のこれまでの審議については http://www.kyoi-ren.gr.jp/ で(なぜか)公開されていますので、ご参照ください。

 この方針のあり方について、現時点で思うところを書いておきます。

1.いじめ防止対策推進法では、各学校にいじめ防止対策の方針を定め、いじめ防止やいじめが生じた場合の対応を行う組織を設けることを義務づけています。各学校の方針が公開され、PDCAサイクルをまわしつついじめ防止対策が進められることを期待しています。

2.いじめ防止対策推進法ができたことで、学校現場の教師たちが新たな負担と感じるようではまずいです。そもそも、教師の多忙さをそのままにしていじめへの対応を改善することは困難です。教師の多忙さの解消は、いじめ防止対策を進めるための前提となるべきです。

3.各学校や地域で、いじめ発生やいじめの深刻化の可能性を高めるリスク要因(たとえば、学級崩壊、担任教師の孤立、不適切な学校広報等)を挙げ、そうした要因を小さくしていく方向でのいじめ防止対策が期待されます。

4.いじめ問題への対応において、いじめかどうかを判断した上で対処することが求められがちですが、実際にはいじめか否かが判然としない状況が多いと考えられます。たとえいじめでなくても、他の児童生徒に失礼なことを言う、からかう、叩くといったことについては注意を促していく必要があります。いじめかどうかの判断に頼らず、いじめにつながりうる子どもたちの言動に注意を払うことが必要です。

5.いじめ問題を正面から取り上げた授業がなされることに、期待しています。特に、「いじめられる側にも問題がある」「チクることは卑怯なこと」「悪いことをしている人には悪口を言ってよい」といった不適切な考え方が子どもたちから出され、話し合うことによって修正されていくことが重要です。子どもが教師や他の大人といじめ問題について話し合う場の設定や、話し合いに活かされる教材の活用が必要です。こうした授業を基盤に、児童生徒がいじめ防止対策に参画できる体制を作ることが求められます。

6.いじめ防止対策には、学校にさまざまな大人が関わり、子どもが大人たちから認められ、何かがあれば相談できる状況が必要です。また、少数派であることを理由に人が差別されるような状況はあってはなりません。考え方や経験が異なる人たちが互いを認めあえるような学校づくりが、いじめ防止対策の面からも目指されるべきです。

7.国は、方針を作って終わりではありません。国にいじめ防止対策の協議会を設置し、地方や学校の取り組みをモニターしつつ、国の方針を見直していくことが必要です。今回短期間で定められることになる国の方針は、絶対的なものと考えられてはなりません。いじめ防止対策は、国と地域・学校との間のキャッチボールとして進められるべきものであり、今回の方針策定は、国から地域・学校にボールが投げられたことを意味するはずです。国は今後、地域や学校から投げられたボールを丁寧に受け取り、次のボールを投げる準備をしていくことになります。

 いじめ防止基本方針策定協議会は、10月11日(金)の会議をもって最終回となり、会議が終われば国の方針が公表されるはずです。私はこの協議会の委員として、上記のような考えをもって議論に参加してきました。これまでのいじめ防止対策で不十分だった点について抜本的な改善をはかるために、必要な材料を方針(及び付属資料)に入れることができるよう、最後まで議論をしていきたいと考えています。