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メディアと教育

2016.08.05

藤川大祐×岩立沙穂・岡田彩花・村山彩希・飯野雅・大川莉央・込山榛香(AKB48)『実践!スマホ修行』発売について

このたび学事出版より、藤川大祐×岩立沙穂・岡田彩花・村山彩希・飯野雅・大川莉央・込山榛香(AKB48)『実践!スマホ修行』という書籍が発売となります。

Photo

2013年頃から中高生にスマートフォンが急速に普及し、私が「平成25年問題」と呼んでいる「ネットの長時間利用」「ネットいじめの深刻化」「犯罪被害の増加」といった問題が起きています。この状況に対してさまざまな対策が進んでいますが、中高生のネット利用は拡大する一方で、「スマホ利用禁止」「フィルタリングの普及」等の制限策だけでは問題は解決しないように思われます。

私は、この状況に対しては、ネットを積極的に利用している人たちを中心に、当事者である中高生が大人も巻き込んで議論していくことが重要だと考えています。これまでも、シンポジウム等で中高生が登壇者となってくださり、突っ込んだ議論をする機会がありました。こうした議論をもっと進めることが必要です。

数年前から、こうした内容の書籍を、ぜひAKB48のメンバーとともに作りたいと考えていました。というのは、AKB48のメンバーたちは日頃から公私両方においてSNS等のネットサービスを積極的に利用していて、ネット上の発信で誤解を受けそうになったり、ネット上に発信した自分の発言や写真がファンなどに使われるのを見ていたり、メンバーどうしでネットでコミュニケーションをとっていたりと、日頃からネットを活用し、そのことを劇場公演のMC(トーク)で語ったりしています。メンバーたちの発信は基本的に事前にマネージャー等がチェックすることはなく、自分たちで日々考えながら発信しているので、ネットでの経験値は非常に高いと言えます。

スマホ時代の友人関係や恋愛関係についても、AKB48のメンバーに語ってもらいたいと考えていました。彼女たちは「恋愛禁止」の中で活動していますが、同世代の人間関係について語る言葉を豊富にもっています。ですから、「恋人同士でずっとネットでのやりとりをして時間を使うことについてどう思いますか?」とか「寂しくて援助交際に走ろうとしている女子高校生がいたら何と言ってあげますか?」といった質問に対して、親身になって自分の言葉で語ってくれるだろうと考えました。また、彼女たちはエンタテインメントビジネスの中にいるわけですから、ネット時代の著作権や肖像権についても自分の言葉で語ってもらえると考えました。

本書は全8章から成っています。前半ではAKB48の13期生である岩立沙穂さん岡田彩花さん村山彩希さん、後半では15期生である飯野雅さん大川莉央さん込山榛香さんに登場いただき、それぞれ3人のメンバーと藤川での座談会形式で4つのテーマについて議論をしてもらいました。この6人はすべて青少年のスマホ利用について語る言葉を豊富にもっていると考えられ、また少し年齢差のある同期メンバーで語り合ってもらうことで、経験や意見の違いを活かしてリラックスした議論をしてもらえると考えました。

このようにしてできあがったのが、以下の8章です。

(前半)岩立沙穂さん、岡田彩花さん、村山彩希さんが登場
 第1章 Stop!炎上路線〜ネット発信のトラブルを防ぐ〜
 第2章 いじめ脱出ゲーム〜人間関係で悩まないために〜
 第3章 毒リンゴを食べないで〜出会い系犯罪の恐怖〜
 第4章 君と僕の危険な関係〜スマホ時代の恋愛事情〜

(後半)飯野雅さん、大川莉央さん、込山榛香さんが登場
 第5章 君のスマホのプライバシー〜情報社会のセキュリティ〜
 第6章 ネット依存の傾向と対策〜青春を無駄にするな〜
 第7章 課金で損しちゃった!?〜お金で騙されないために〜
 第8章 著作権や肖像権のキャパシティ〜エンタメ産業の未来のために〜

AKB48に詳しい方ならお気づきかもしれませんが、各章のタイトルはAKB48の楽曲(多くは登場メンバーに関係の深い楽曲)のパロディとなっています。各章の扉ページでは、それらの楽曲と章の内容に関わる短い文章も載せさせていただいています。(さらに、本のタイトルも「おわりに」も楽曲タイトルのパロディとなっています。)

この本は、「授業づくりエンタテインメント!」シリーズ第2弾として作られました。第1弾である『授業づくりエンタテインメント!』は、ゲーム、アイドル、お笑い等のエンタテインメントを手がかりに授業づくりの研究を楽しく読めるものとしてまとめたものです。『授業づくりエンタテインメント!』では、今回もご登場いただいた村山彩希さんが表紙とミニ対談で登場してくださり、評論家の宇野常寛さんも対談で登場してくださいました。エンタテインメントの力を教育に活かすことは、私のライフワークと思っています。今後も、「授業づくりエンタテインメント!」シリーズとして、エンタテインメントを取り入れた授業づくり関連企画を進めていきたいと思っています。

『実践!スマホ修行』は、各章ごとに藤川による講義、AKBメンバーとの討論、藤川による振り返りの3パートで構成されています。講義部分には課題も出してありますので、たとえば教室でこの課題について議論をし、AKBメンバーとの討論部分で話し合いを深めていただくという使い方が可能です。情報モラル教育のテキストとして、活用していただくことを願っています。


2016.03.01

青少年インターネット環境の整備等に関する検討会(第30回)資料

内閣府の青少年インターネット環境の整備等に関する検討会の座長代理をつとめさせていただいております。本日開催の第30回会議において、論点を出させていただきました。スマホ普及後の対策がほとんど機能していないということ、PDCAサイクルがまわせる形で取り組みを進めるべきことをお話ししました。詳しくは発表資料をご覧ください。

発表資料は、こちらです。

【2016.3.16追記】資料のうち出会い系サイトに関する記述に誤りがありましたので、修正いたしました。内閣府会議の事務局にも連絡済みです。

2015.08.27

真のフィルタリング利用率は23%まで急落している

去る6月16日(火)、自由民主党のプロジェクトチームに呼ばれ、青少年のインターネット利用の現状と課題についてお話をさせていただきました。その後、自由民主党からは提言が出され、国の政策にどのようにこの提言を反映させるかが検討されているようです。

2009年にインターネット環境整備法が施行されて以降、青少年のインターネット環境の整備の柱の一つが、フィルタリングの推進でした。内閣府「平成25年度青少年のインターネット利用環境調査」によれば、フィルタリングの利用率はピークとなった平成24年度は63.5%まで上昇していました(下図)。

Naikakufu25

ところが、平成25年度、スマートフォンが急速に中高生などに普及し、事態は一変します。上の図でも平成25年度のフィルタリング利用率は55.2%に急落しており、特にスマートフォン利用者については47.9%と低いことがわかります。

問題は26年度です。あろうことか、内閣府は調査方法を変えてしまい、経年変化ができない状態で調査結果を発表しました。「平成26年度青少年のインターネット利用環境調査」においては、機種ごとのフィルタリング利用率が発表されているのみで、以下のようになっています。

スマートフォン利用者 46.2%
携帯電話利用者 61.1%

スマートフォン利用者が50.0%、携帯電話利用者が20.3%なので、加重平均をとると、平成26年度のフィルタリング利用率は50.5%と考えられます。平成24年度から、63.5%→55.2%→50.5%と下落しているわけです。

しかしながら、これはなんらかのフィルタリング(あるいは機能制限)をかけているか、そもそもインターネットを使えないようにしているかの比率であり、十分なフィルタリングがかかっているかどうかは別です。スマートフォンの場合、次の三つをかけることで十分なフィルタリングがかかっていると言えます。

1)携帯電話回線にかかる「ネットワーク型」のフィルタリング
2)Wi-Fi利用時にも機能する「端末型」のフィルタリング
3)アプリに関するフィルタリングもしくは機能制限

平成26年度の内閣府の調査では、次のようになっています。

Naikakufu26

多くの人が1)はかけていても、2)や3)はかけておらず、三つともかけている人はせいぜい10%と言えます。これは、スマートフォン利用者のうちフィルタリングをかけていると回答した人の中での話ですので、インターネットが使えない設定にしている等の対応をしている人が1.8%いることも考えても、十分なフィルタリングをかけている人の割合は約7%と推定されます。
【2016年3月13日追記】インターネットが使えない設定にしている等の対応をしている人は0.6%でした。しかしながら、十分なフィルタリングをかけている人の割合を多めに推計していますので、この後の計算については修正せずにおきます。

とすると、十分なフィルタリングをかけている人の割合は、次のようになります。

スマートフォン利用者 7%
携帯電話利用者 61.1%

これで加重平均をとると、フィルタリング利用率は22.6%となります。

もちろん、平成24年度、平成25年度についても、十分なフィルタリングをかけている人の割合は少なくなります。これらの年にもスマートフォンのフィルタリング利用者のうち十分なフィルタリングをかけている人の割合を10%程度と考えると、それぞれの年のフィルタリング利用率は次のように推測されます。

平成24年度
スマートフォン利用者(全体の19.7%と推定) フィルタリング利用率 7%と推定
携帯電話利用者(全体の35.1%と推定) フィルタリング利用率 63.5%(機種別のデータがないため全体の率を採用)
加重平均 43.1%

平成25年度
スマートフォン利用者(全体の34.7%と推定) フィルタリング利用率 7%と推定
携帯電話利用者(全体の24.8%と推定) フィルタリング利用率 66.7%
加重平均 31.8%

以上のように、十分なフィルタリングをかけている人の割合は、43.1%→31.8%→22.6%と急降下していることがわかります。少し前までフィルタリング利用率は6割程度と信じられていたのが、十分なフィルタリングをかけている人の割合は実質2割程度にまで落ちているわけです。

青少年インターネット環境整備法が想定したフィルタリングの普及による安全な環境整備の枠組みは、すでに崩壊しているとさえ言えます。いじめや犯罪被害も増えていると考えられ、この状況をどうするのかが問われています。

2014.10.09

今年度もグリー×千葉大学の共同授業で、学生がグリーのエンジニアとゲーム教材アプリを制作します

  昨年度、グリー×千葉大学の共同授業として「メディアリテラシー教育演習」の授業を実施し、学生がグリーのエンジニアはじめ多くの方々のご協力を得て、ゲーム教材アプリづくりを行いました。今年度も、10月7日(火)より、同授業が始まりました。
  グリーのサイトにプレスリリースが掲載されています。今年度は小学校で実際に児童にアプリを使ってもらう予定です。

プレスリリース グリーと千葉大学教育学部、ゲームと学びに関する授業を共同で実施(グリー株式会社)

2014.05.22

衆議院の青少年問題に関する特別委員会における意見陳述について

 本日、衆議院の青少年問題に関する特別委員会にて、青少年とインターネットに関する問題について、参考人として意見陳述いたしました。青少年インターネット環境整備法の課題と意義、ネットいじめを含む学校教育における現状と課題、福祉犯被害に関する課題、リベンジポルノに関する立法の可能性の4点について、意見を述べさせていただきました。

 私の発表資料はこちらです。

 審議の模様は、衆議院インターネット中継にてアーカイブが配信されていますので、よろしければご覧ください。

 青少年インターネット環境整備法にもとづく民間主導による取り組みは着実に成果をあげており、学校における情報モラル教育もしっかりと行われるようになっていますが、スマートフォンの急速な普及やゲーム機や音楽プレイヤーでのインターネット利用拡大といった状況から問題が起きており、そうした問題への対応が法的に必要かどうかについて意見を述べました。私としては、基本的に法制化を急がずに各関係者の自主的な取り組みを進めていくことが必要であるが、そうした取り組みだけで足りない部分があれば法的な対応を検討する必要があるというスタンスでお話ししました。

 議員の方々が大変丁寧に質問してくださり、充実した議論がなされたと感じています。なんでも規制すればよいとか、すべて家庭の責任であるといった極論はなく、真摯に問題解決を目指す議論が志向されていました。貴重な機会を与えられたことに感謝しています。

2014.03.23

著書『12歳からのスマホのマナー入門』発売

このほど、大空出版より著書『12歳からのスマホのマナー入門』が発売となりました。

この本は、私の単著としては初めて、12歳を中心とした若い世代の方々に向けて書かせていただいたものです。私は青少年のインターネット利用の問題にずっと関わってきましたが、ここ2年ほどのスマートフォンの急速な普及で、この問題は新しい局面に入ったと感じています。これまではフィルタリングの普及を中心とした安全な環境づくりを関係の方々とともに全力で進めてきましたが、スマートフォンの普及によってインターネットが偏在するユビキタス社会が本格的に実現する中で人は、特に思春期の若者はどうやって生きるのかを問うことが重要になっていると考えています。

この『12歳からのスマホのマナー入門』は、ユビキタス・インターネット社会の若者の生き方を考えるとっかかりとなればと思って書かせていただいたものです。Q&A式になっている新書なので、読みやすいと思います。多くの方にお読みいただけることを願っています。

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2014.03.05

グリー×千葉大学「メディアリテラシー教育演習」 教育アプリ開発の取り組み特集ページ

 グリーと千葉大学のコラボレーションによる授業「メディアリテラシー教育演習」での教育アプリ開発の取り組みが、グリーのサイトで詳しく紹介されました。ぜひお読みください。

http://corp.gree.net/jp/ja/csr/special/chiba-university/

2014.02.28

青少年のインターネット利用に関する最新のデータについて

先日、内閣府の「平成25年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」 http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/index.html の速報が発表されました。スマートフォンの利用率が前年に続いて激増していること、小学生の携帯電話利用者が激増していること、フィルタリングの普及率が下落していること等、注目すべき点が多くなっています。

また、昨日、警察庁から「平成25年中の出会い系サイト及びコミュニティサイトに起因する事犯の現状と対策について」 https://www.npa.go.jp/cyber/statics/h25/pdf02-2.pdf が発表されました。一般のサイトでの福祉犯(児童買春、淫行等)の被害が史上最多となってしまい、アプリID交換掲示板に起因する被害が激増しています。

スマートフォンの急速な普及によって、これまでの青少年を守る仕組みが十分に機能しなくなっています。非常に厳しい状況です。

2014.02.11

掲載されるに至らなかった教材文

 ある会社から、中学校3年生向けの国語の教材文の執筆を依頼されました。私なりに書いたのですが、特定の事件にふれることも若者の逸脱行動について書くことも認められないので修正してほしいと言われました。全部直せと言われているに等しいので、私から執筆を辞退させてもらいました。

 教材とするにはもっと練らなければならない文章かもしれませんが、せっかく書いたものですので、ここに公開させていただきます。この文章を活用していただける方がおられましたら、ぜひご一報ください。

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世界とのつながりを知る

                                藤川大祐

 インターネットでの若者の発信が問題になっています。遊園地で上半身裸になって暴れ、その様子をネットに流した大学生がいました。コンビニエンスストアの店員が、アイスクリームケースの中に入って写真を撮り、その写真をネットで発信したことがありました。ある駅で人を殺すという犯行予告をネットに書き込んで逮捕された中学生がいました。
 このような行為をする若者は、善悪の区別がついていないのでしょうか。そんなことはないでしょう。遊園地で暴れたり、アイスクリームケースの中に入ったり、犯行予告をしたりすることが悪いことだと、彼らが知らないはずはありません。
 むしろ、彼らは自分たちの行為が悪いことだとわかっているからこそ、こうした行為をしてしまったと考えられます。若い人が、社会の秩序に反抗し、常識から逸脱する行動をとることは、いつの時代もありうることです。逸脱行動をとることによって、仲間たちが面白がってくれたり、「なかなかやるじゃないか」と認められたりすることもあるでしょう。インターネットで問題ある発信をすることも、一種の逸脱行動と考えられます。人は、社会の秩序に従ったり反抗したりしながら、少しずつ自分なりの社会の関わり方を安定させていくものなのかもしれません。
 大人になってしまえば、若い頃に多少の逸脱行動があったとしても、そうした行動が問題になることはなくなります。立派なことをしている大人が、「若い頃はやんちゃで、馬鹿なことをやっていた」と逸脱行動について話すことはよくありますが、こうした話を聞いても、いったいどんな悪いことをしたのだろうと深刻に気にする人はあまりいないでしょう。
 しかし、インターネットでの問題ある発信の場合は、様子が違います。問題ある発信がいったん注目されるようになると、瞬く間にその発信を紹介し非難する人が増えていき、「炎上」と呼ばれる状態になります。テレビや新聞でも報じられるなど、社会で広く知られるようになります。非難がエスカレートすると、発信者がどこの誰なのかを暴いて、家や学校に電話をかけるなどの攻撃をする人が出てきます。こうした攻撃は過剰な社会的制裁であり、許されるものではないのですが、止めることは困難です。結局、内定していた就職が取消になったり、コンビニエンスストアが店を閉めることになったりと、当事者や関係者が大きな代償を払うことになります。
 そして、「炎上」がおさまっても、その「炎上」の記録はずっとインターネット上に残っていまいます。インターネットで少し検索すれば、何年も前の「炎上」の記録を読むことができます。大人になっても、検索可能な状態で、逸脱行動の記録が残されてしまうのです。
 インターネットが普及する以前は、社会に広く発信するための手段は、テレビや新聞などのマスメディアに限られており、一般の人が広く発信することは不可能でした。ですから、一般の人に起きているさまざまなことの多くは、すぐに忘れられ、話題にのぼらなくなっていました。しかし、インターネット社会の現在、多くの人が日々インターネット上のサービスにさまざまなことを投稿し、その投稿は公開され、記録されていきます。場合によっては、投稿が他の人に紹介され、インターネット上を拡散していきます。
 テレビや新聞といったマスメディアには、広く情報を発信する立場にふさわしい責任が問われてきました。情報発信において誤りや極端な偏りは許されず、報道などによって不当に人を傷つけることもあってはなりません。本来、インターネットで発信する人にも、テレビ局や新聞社に近い責任が求められているはずです。
 このように言うと、インターネットで発信する人の大多数は、発信してもそれを見る人は限られており、影響力が少ないからマスメディアと一緒にするのはおかしい、と言われそうです。たしかに、日常の発信においては、多少の誤りや偏りがあっても特に問題にならないでしょうし、問題になったとしてもすぐに訂正したり誤ったりすれば、それで済んでしまうでしょう。
 しかし、若者の発信は影響力が少ないと考えてしまうところに、「炎上」につながる発信を生むものがあります。インターネットで発信する若者の多くは、内輪の仲間たちに向けて日常の情報発信を行っています。しかし、インターネットは世界につながっているもので、公開のサイト等への投稿は、原理的には世界中の人が見られるものです。無名の若者の投稿であっても、ひとたび注目を集めたら、大きな影響力をもちえます。いつも意識している内輪の仲間たちの外側に、世界につながる大勢の人がいるということを想像する力が、重要だということになります。
 インターネットは世界とつながっているにもかかわらず、インターネットを利用する若者の意識は、内輪の仲間たちばかりに向きがちです。学校で毎日会っている人たちと、家に帰ってからもメールやメッセージを送り合い、サイトへの投稿を互いに読み合ってコメントを書いたりします。インターネットは、関わる世界を広げるより、内輪のコミュニケーションを深めることに使われています。
 内輪の人たちとのコミュニケーションは、より広い人たちとのコミュニケーションと異なる性質をもっています。内輪の人どうしであれば、さまざまな文脈を共有しているので、断片的な言葉だけでもコミュニケーションが成立します。たとえば、同じ漫画が好きな人どうしであれば、「5巻、読んだ?」「うん。すごくよかった」というようなやりとりが成立します。しかし、何という漫画を読み、どこがどのようによかったのかを説明しなくても、どのような漫画の話で、どのような期待があったのかが共有されているために、説明を加える必要がありません。しかし、文脈を共有していない人に対しては、どのような漫画のどこがどのようによいのかを明示的に知らせる必要があります。
 文脈を共有していない相手に対して適切に説明するためには、練習が必要です。練習は、インターネット上でのみ行う必要はありません。日頃から保護者や教師以外の大人と話をする機会をもつこと、学校外の人にインタビューをすること、異学年の人や学校外の人に対して発表を行うことなども、文脈を共有していない人への発信の練習となるでしょう。
 そして、インターネットを使って、さまざまな人たちと交流することも可能です。中学生や高校生が、興味のある学問や仕事に関わる人から助言をもらったり、自分の意見を発表したりすることもあります。部活動や委員会で取り組んでいることを発信したり、作品をインターネット上で発表したりすることもできます。災害時には、被災地の状況を現場から発信することも必要となるでしょう。事件やトラブルに遭わないよう注意をしながら、インターネットで文脈を共有していない多様な人々と交流することで得られることがあるはずです。
 インターネットは、世界とつながっています。このインターネットをどのように使うのかが、現代を生きる私たちには問われます。この問いに答えるために、内輪の仲間たちだけでなく、外側にいるさまざまな人々のことを考える想像力を育てていきたいですね。

2013.11.13

「ネット依存の中高生が8.1%。全国で推計51万人」報道について(再論)

 以前の記事でも書きましたが、現時点でも混乱が生じているようなので、あらためて「ネット依存の中高生が8.1%。全国で推計51万人」報道についてポイントを整理しておきます。

・2013年8月1日に、「厚生労働省の研究班」による発表として、各社が報道。

・しかし、斎藤史郎氏( http://d.hatena.ne.jp/shiro0922/20130825/1377442204 )らによって、この発表は「平成24年度厚生労働科学研究費補助金 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業」(研究代表者:日本大学、大井田隆氏)のものであることが指摘されている。厚生労働省の研究班でなく、厚生労働省の補助金による研究ということになり、「厚生労働省の研究班」による発表というのは誤報ということになる。しかも、この調査は「未成年の喫煙・飲酒状況に関する実態調査研究」がテーマであり、ネット依存を中心としたものではない( 発表資料は http://www.med.nihon-u.ac.jp/department/public_health/gakunen-dayori.html に掲載されており、「H24年度喫煙飲酒全国調査結果(インターネット依存)」というタイトルがつけられている)。

・発表資料では、「インターネット依存」の見出しの下、以下が示されている。

 不適応使用 男子 14.1%、女子 18.6%
 病的使用  男子  6.4%、女子  9.9%

 そして、不適応使用104.7万人、病的使用51.8万人が推計されると書かれている。しかし、資料には調査方法が書かれておらず、「Young Diagnostic Questionnaire for Internet Addictionを翻訳」「適応的使用:0~2点 不適応使用:3~4点 病的使用:5点以上 (0~8点で評価)」とあるのみである。これは http://netaddiction.com/ に掲載されている8項目の質問(初出は1998年と考えられる)を翻訳して用いたものと考えられる。「不適応使用」「病的使用」にあたる表現をYoungが使っていたのかどうか、使っていたとして原語は何だったのかは不明(大井田氏らの発表以外に「不適応使用」「病的使用」の表現は見出せない)。

・なお、ネット依存の治療を掲げている国立病院機構 久里浜医療センターのサイトには、「ネット依存のスクリーニングテスト」として、Youngのテストを含む2種類のテストが紹介されている( http://www.kurihama-med.jp/tiar/tiar_07.html )。しかし、Youngのテストは上記8項目のものでなく、20項目5件法のものである。

(参考)Kimberly Young による Signs of Internet Addiction(http://netaddiction.com/ より、翻訳は藤川)
Dr. Youngはインターネット依存診断質問紙(the Internet Addiction Diagnostic Questionnaire (IADQ))を開発した。5つの兆候があれば診断を要する。

1. インターネットに心を支配されていると感じますか?(これまでのオンラインでの活動のことを考えたり、次のオンライン・セッションを楽しみにしたりする)
2. 満足するためにはインターネットを使う合計時間を増やす必要があると感じますか?
3. インターネット利用をコントロールしたり短くしたり止めるための努力の失敗を繰り返し行ってきましたか?
4. インターネット利用を短くしたり止めたりしようとするときに、気分が落ち着かなくなったり、機嫌が悪くなったり、絶望したりすることを感じますか?
5. 最初に考えていたより長時間、オンラインにとどまりますか?
6. インターネットのせいで、重要な人間関係や仕事や教育・キャリアの機会を失いそうになったことがありますか?
7. インターネットにどれだか没入しているかについて、家族やセラピストやその他の人に嘘をついたことがありますか?
8. 問題から逃げたり落ち込んだ気分(無力感、罪悪感、心配、不安等)から救われたりするためにインターネットを使いますか?


 なお、橋元(2013)でも、スマートフォン利用者により高い依存傾向があることが示されている。※橋元良明(2013)「スマートフォン利用と依存傾向−総務省情報通信政策研究所との共同研究から【速報版】」(利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会スマートフォン時代における安心・安全な利用環境の在り方に関するWG(第3回)配布資料)

・スマートフォン利用者は平均利用時間が長い
・スマートフォン利用者はネット動画利用が増え、テレビ・睡眠・勉強が減少。
・スマートフォン利用者は依存傾向「高」6.9%、「中」43.7%で、非利用者(「高」5.8%、「中」32.4%)よりやや依存度が高い(0.1%未満で有意差あり)。

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